みやまえ人Story VOL.5 星野 満さん 星野 代緒子さんご夫妻
ずっと住み続けたいまちに。これからも愛すべきまちに。
みやまえ人Story
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星野 満さん
星野 代緒子さん VOL.5
宮前区鷺沼在住・在勤(東京都出身/東京都出身)
1954年10月生まれ / 1955年3月生まれ
Little Cafe WM / ワグプランニング 経営
宮前まち倶楽部コネクション:『みんなのツリー2nd Season 2015』(もみの木の設置&管理。ありがとうございます♪)
田園都市線『鷺沼駅』と『たまプラーザ駅』の間あたり、鷺沼3丁目の交差点近くの住宅地の一角に、ひっそりと佇む可愛らしいカフェがある。それが、『Little Café WM』。歩いていて通り過ぎても、気がつかなければ気がつかない、隠れ家的な存在感も魅力のひとつ。そんな知る人ぞ知るカフェがオープンしたのは、昨年2015年4月16日のこと。オープンしてやっと1年が過ぎて、散歩の傍らに立ち寄る常連客、美味しいコーヒー目当てに訪れるご近所の方など、ご贔屓のお客さんが少しずつ増え始めてきている。席数は、たったの8席。8席すべて埋まるような事態になれば、本当に身動きが取れなくなってしまうほどの、こじんまりとした空間。だからこそ、訪れた客同士が仲良く会話するということも、しばしば。本当は、自分だけの秘密の場所にしておきたいような、素敵なご夫妻が笑顔で出迎えてくれる、居心地が良くてアットホームなカフェ『Little Café WM』。
自宅の敷地内のガレージ2Fを建て直して作られたこのカフェは、ご主人がすべての内装を手掛けるだけでなく、植栽や看板、掲示板などを美しくレイアウトするなど、外周り全般を整えた。白を基調とした明るい店内、高い天井には古い木の梁がめぐり、床も棚もナチュラルな雰囲気を醸し出す木によって温もり溢れる空間に仕上げられている。愛着のあるミシンの脚を利用したテーブルや、想い出のある椅子をリメイクしたり、カウンターには鏡を設置するなどして、狭い空間ながらも、いかにお客様に快適に過ごしていただけるかを考えて手が加えられている。また、店内にはご主人お手製の木工小物がところどころにさり気なく置かれている。ドアノブに引っ掛けられるウエルカムボードや、もみの木のツリーをかたどったオブジェは黒板仕様になっていて、チョークで好きなメッセージを書くことが出来るようになっていたりする。ビス1つで簡単に取り付けられるフック、さまざまな素材・色・形をした個性的な額縁や写真立て、星を型どったマガジンラックなど。カフェに温もりと心地よさを演出するアイテムとして存在している。そしてその小物は、どれもリーズナブルな価格で購入できるというのもまた嬉しい。 さらに木工製品だけでなく、奥様お手製の布小物も並ぶ。自ら得意の洋裁で、手作りの子ども服や布小物を作り、子ども用品や雑貨なども扱っていた。
幼稚園や小学校などで便利なスクールバッグやポーチ、ランチョンマット、ナプキン、エプロンなど、1つ1つ丁寧に仕上げられて作られている。「30年以上前から、近所の洋裁の先生に習って、自分の3人の娘の服は、すべて手作りで作ってきた。入学式、卒業式、発表会といった式服から普段着まで、子どもの服だけでなく、自分の服も全部手作りしてきた。自営業の夫を助けるために、出来る限りのことをしてきた。」そんな腕を誇る奥様だからこそ、ご要望があれば、お好きな生地で、お好きな布小物〜洋服など、何でも相談に応じて作ってくれるという。 そんな空間の中で、ひときわ魅きつけられるのが星野さんご夫妻の存在感である。
すらりと背の高い素敵なご主人が、一杯ずつ丁寧にコーヒーを淹れてくれる。コーヒーは、自然栽培(無農薬)のオーガニックコーヒーというこだわり。注文がある毎に、豆を挽いて、ハンドドリップで一杯ずつ丁寧に淹れてくれるコーヒーの味わいは格別。香りが高く、風味も豊か。小さな空間が、あっという間にコーヒーの香りに包まれる。やはり、心を込めて淹れてくれるコーヒーの味わいは何とも言えないもの。コーヒーだけでなく、紅茶もまたオーガニックのもの。そんなご主人とは好対照に、小さくて可愛らしい奥様お手製の焼き菓子が日替わりで用意されている。大納言入り抹茶シフォンケーキやキャロットケーキなどの焼き菓子も、オーガニックな素材にこだわっている。たとえば小麦粉ではなく、あえて米粉にこだわっているのもそのひとつ。「日本人は本来お米を食べてきた民族だから、やはりお米を大切にしていきたい。近頃は小麦アレルギーなどがあったりして、やっぱり日本人にはお米かなと。もっちりしていて、美味しいんですよ。米粉だけでなく、焼き菓子に使用する野菜や果物、その他の材料も、出来るだけ有機のもの、無農薬のものにこだわっています。」と代緒子さん。
そういった意識は、3人の娘さんを育てていく中で、自然と生まれてきたことだという。人間の基本はやはり食にある、そこが原点だと語る。だから添加物や農薬などを出来るだけ排除する食生活を心がけてきた。「それは母親として大切にしてきた意識であり、母親として娘へ伝えられることはやはり食のことかなと思う。今食べているものによって、将来の身体が作られていく。だからこそ、食は大切。」そんな子どもを想う気持ちを込めて、愛情たっぷりに作られた手作りのお菓子は、どれも自然な味わいで、優しい美味しさが魅力。
星野さんご夫妻は、共に東京都出身。そんなご夫妻がご縁があって、宮前区鷺沼の地に移り住んで今年で38年目となる。当初は、平屋の小さな家から、このまちでの生活がスタートした。
ちょうどご主人が30歳になった頃、自宅敷地内にあるガレージ2Fを建て直して、ご夫妻でリサイクルショップを経営することになった。奥様は、不要になったベビー服&子ども服を買い取り、手直しをして販売したりする他、バギーやラックなどのベビー用品も扱っていた。ご主人は中古の自転車などを修理したり、リメイクすることで再生して販売していた。その当時のリサイクルショップの名前が『Woody』だった。そこでは、ご主人が得意とする木工製品の販売もしていて、そのオリジナルの木工製品には『WM』の焼き印が押されていた。『WM』の「W」=Woody=主に木工製品を扱っていたことから、「M」=ご主人の名前のイニシャル&奥様=ママ(Woodyママ)、そんな想いが込められた『WM』というイニシャルは、当時のリサイクルショップからカフェへ、『Little Café WM』という店名として受け継がれていくこととなった。
その後、3人の娘さんの子育てで奥様が忙しくなったことなどから、ご主人の満さんが家具の制作、やリフォーム、修理および修復といった仕事を請け負う『わぐ工房』→『ワグプランニング』へとスタイルを変えていった。本来の内装業という仕事の枠を超えて、家具を直したり、内装の修理をしたり、オーダーを受けて家具を作ったり。建て付けの悪いドアを直したり、床のキズをきれいに直したり。何十年にも及ぶ経験とさまざまな知識の蓄積、様々な情報を調べ、オリジナルに開発した、マルチな才能を発揮した修理業を生業としている。それが、ワグ・プランニング。「常に、お客さんに満足していただけることを第一に仕事に取り組んでいる。だから、よそから仕事を請け負った際にも、単に指示通りに仕事をするのではなく、自分なりに検証してみて、それが本当に最終的に使用するお客様にとってベストかどうかを考える。お客様の立場にとって、それが本当に満足の行く結果になることなのかどうか、常に吟味しながら、丁寧に仕事に取り組むことをポリシーとしている。」と、ご主人の満さんが自らの仕事に対する姿勢を熱く語ってくれた。
「いつかこの場所で、カフェをやってみたいと思っていた。経営している会社は、会社といっても事務職員が常駐して、営業をするというスタイルではなかった。こういうカフェという場を通して、自分の仕事を話したり、紹介することができるきっかけの場所、スペースになればいいなと考えて、カフェという場を作りたかった。そして、ここをベースに、何か展開出来ていけたらいいなと考えていた。ちょうど定年に近い年齢になったこともあって、単にビジネスを展開する場としてではなく、お客様との何気ない会話の中から、暮らしの中の困りごとを聞いてサポートしていきたいという気持ちも芽生えてきた。そして、やっと念願のカフェオープンへとこぎ着けることとなった。」
そんな話を受けて、奥様も自分が出来ることは何か考えた。焼き菓子を作って提供することはできるかなとか、得意な洋裁をどこかに生かせないか。でもカフェの経営について何も知らない、一からのスタートとなる。やるからには、まずは勉強しなければいけない。そう思い立ち、川崎市が開催したコミュニティカフェ講座に参加。カフェを営業・経営していくためのノウハウや心構えなどを勉強した。
「コミュニティカフェ講座には、いろんな立場や想いのもった方々が参加していた。いくつかのカフェの見学、経営などのやり方を学んで、うちはどんなやり方でやっていくかということを考えてきました。カフェを1年ちょっとやってきてみて少しずつわかってきたこと、それはコミュニケーションをとることを望んでいる方が多いということ。だからお客様の半分以上は常連さん。ふらっと訪れる方に元気を与えたり、もらったり、お互い様の関係を築いていけると言いなと思っています。」
「3.11の大震災を経験して、つくづく人と人が支え合わないといけないことを痛感しました。だからこそ地域に根ざした、人と人がつながっていける、そういう場になればいいと考えていています。」
そしてもう1つ、このカフェで、そしてこのご夫妻が大切にしていること。それはリサイクル=捨てない生活。たとえば、カフェで出たコーヒー豆のゴミは乾燥させて土に還す、コーヒーを淹れる時に使用したフィルターなどの紙類はミックスペーパーなどのリサイクル可能な収集ごみとして出す、生ゴミなどはごみ処理機にかけて土へと還す、古くなったTシャツなどは裂いて布ぞうりなどにリメイクする。
「子育てが一段落して、手を掛けられる時間が出来たことで、未来の子どもたちのために、自分たちが出来ることをやっていきたい。原価が多少高くても、自分が安心して本当に食べたいものを人にお出ししたい。そういうことを最近痛切に感じています。こうした子どもたちへの想いが、さらに孫たちへと、想いを繋げていきたい。そしてそれが安心安全で、ひいては真に平和な日本に、世界になって行くことが私たち夫婦の願いです。」と。
このご夫婦の生き方、40年以上にも及ぶお二人の想いには、ずっと一貫して通じるものがあることを改めて感じさせられた。決して派手ではない、贅沢でもない。ご主人は家具や家にまつわること、いわゆる衣食住の「住」を担当、奥様は衣食住の「衣」と「食」を担当してきている。ご夫妻の衣食住に一貫していえること、大切にしていること、それが『手作り』ということ。必要があれば買う、必要でなくなったら捨てることが当たり前の世の中で、あえて『手作り』を大切にしているということ。必要でなくなっても、手を加え、必要とされるカタチに生まれ変わらせる。そんな共通した意識がお二人の中には共通して流れている。ご主人が家具を作り、それを修理したり、修復したり。奥様が洋服を作り、それを手直ししてまた必要とされる人の元へ。単にごみとして捨てるのではなく、それが生きる場所へ還す、もう一度価値ある姿に生まれ変わらせる。そんな環境に意識した生活を日常として生きている。そしてそれは、お二人のためだけではない。愛する3人の娘さんのため。そしてさらにお孫さんのため。愛するものへ繋げたい想いは、単にそこだけにとどまっていくものではなく。さらにさらに、波紋のように広がっていく力を持っているものだと、私は信じている。
お二人の想いを、自分の想いとともに、真に平和な未来へと紡いでいくことが出来ますように♪
Welcome,『Little Cafe WM』へ♪
Little Café WM / ワグプランニング
〒216-0004 宮前区鷺沼3-13-55
TEL/FAX 044-877-7363
営業日:水・木・土・日(第1・第3)
営業時間:12:00〜18:00(L.O.17:30)
*2016年8月は第1週のみ営業、その後夏期休業とさせていただきます。
*シーズンや月によって、営業日が変更となる場合がありますので、ご確認ください。
(2016年7月取材/2016.7.29公開)
(取材&文:笠原千恵子 カメラマン:青柳和美・笠原千恵子)